よもぎたむらができるまで32
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どうも、しょうさんの息子のゲンです。
現代語に訳したものを紹介します。
奥州藤原氏・其の六
国を護る大寺院の建立にあたり供養し奉ります。
五色の旗で飾った仏堂に釈迦三尊を、三重塔に大日如来と弥勒菩薩を安置しました。
瓦葺きの蔵には、紺の紙に金と銀とで経を写した一切経を納めました。
鐘つき堂を造り、梵鐘を吊るしました。
その鐘の音は、世界のあらゆる人のもとに届き、苦しみをやわらげ、心を清らかにするでしょう。
陸奥の地では、官軍の兵と蝦夷の兵が争い、古来より多くの命が失われました。
毛を持つ獣、羽ばたく鳥、鱗を持つ魚も、数限りなく殺されてきました。
その骨は朽ち果て、陸奥の土地くれとなっておりますが、鐘を打ち鳴らすたびに、
罪なくして命を奪われたものたちの霊が慰められ、極楽浄土に導かれることを願っております。
五百の僧が、釈尊の教えをすべて記した五千余巻の一切経を読み上げました。
その声は天にも達したことでしょう。
以上のように善行を積む本意は、ただ国家鎮護を祈るためであります。
幸いにも白河法皇様が統治なさる世に生まれあわせ、安らかに過ごすこと三十年にも及びます。
今、杖にすがる年齢となり、最後の勤めに、仏の道を広める以上のことがあるでしょうか。
平泉は東に東龍、西に白虎、南に朱雀、北に玄武、四方を神仏が守護する理想の地です。
平泉を都とし、陸奥は恩寵あらたかなる国となりました。
わたくしは、戦乱で父と叔父を失い、母と妻と初めての子を殺され、弟とは骨肉の争いを余儀なくされました。
殺生に手を染めたこの身が、思いがけなくも蝦夷の棟梁となり、陸奥の民が心安らかに暮らせる国をつくることができました。
これを仏の慈悲と呼ばずして、何と呼びましょうか。
願わくば、この世界中に、仏の道の根本である、万物皆平等の教えが広まらんことを。
天治三年三月二十四日 藤原朝臣清衡
以上が、清衡が読んだ供養願文です。
どこまで正直な人なんでしょうね。
とても国を代表する人の言葉とは思えません。
周りから慕われていた人物だったことは想像するのに難しくないです。
平泉はこの後しばらく平和に時が進みます。
しかし、またしても源氏に狙われることになるのです。
へつづく
大畑町の古代 おおはたまちができるまで01
蝦夷の反乱 よもぎたむらができるまで10